大石病院通信

広島県福山市川口町の大石病院です

心不全パンデミック

 感染症が世界的に大流行することを「パンデミック」と言います。まさしく今は、新型コロナウイルス(COVID19)のパンデミックの最中ですが、今回のテーマは「心不全パンデミック」です。今、世界的で心不全の患者さんがすごい勢いで増加しており、心不全パンデミックと呼ぶべき事態となることが心配されています。日本では現在約100万人の心不全患者さんがいると推定されていますが、この先2035年まで増加し続けると予想されています。

 ところで心不全とはどんな病気でしょうか?心不全は「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」です。高齢化が進むと心臓が悪くなる人が増え、結果として心不全となる人が増えていきます。心不全になると、少し動くだけで息切れがするためにトイレに行くのも一苦労という状態になることもあり、また、足のむくみが目立ち、さらには胸水といって肺の中に水がたまってしまうこともあります。

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 心臓は全身に血液を送るポンプの役目を果たしています。心臓が悪くなると、このポンプ機能が低下して心不全となります。心臓が悪くなる病気としてまず思い浮かぶのは、心筋梗塞や狭心症とう人も多いと思います。この病気は、心臓を栄養する血管に動脈硬化がおこるなどして、その結果心臓の動き、詳しくいうと心臓が縮む力(収縮)が悪くなりポンプ機能が低下します。ほかにも心臓が悪くなる病気として、弁膜症、不整脈などがあります。

 糖尿病は動脈硬化の原因となるので、糖尿病のある方は心筋梗塞や狭心症にもなりやすいです。しかし、なかにはこのような心臓の病気にかかった覚えがないのに、心不全となってしまう人がいることがわかってきました。糖尿病のある方が心不全となるリスクは糖尿病でない人と比べると、男性で2倍、女性で5倍にも上ります。これは、心筋梗塞となるリスクの約2.8倍で、脳卒中になるリスクと同程度とも言われています。 また心不全となった方の約30%が糖尿病であったというデータもあります。

 ではなぜそんなことが起こるのでしょうか。その原因として糖尿病性心筋症という病気があります。糖尿病性心筋症では、心臓の筋肉が肥大し、線維化が起こるなどして、心臓のポンプ機能のうち心臓が縮む力(収縮)はまだ正常でも、心臓が広がる力(拡張)が低下することで心不全となります。

 一方で、糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬は、心不全を改善する効果も併せ持つことがわかってきました。糖尿病と心不全の関係は、これからもますます注目されていくことになりそうです。