大石病院通信

広島県福山市川口町の大石病院です

糖尿病教室「糖尿病と動脈硬化」

 3月25日(月)に「目指せ!血管年齢若返り!~糖尿病と動脈硬化~」というテーマで糖尿病教室を行いました。

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  糖尿病の人は、動脈硬化が進行しやすく、その結果心血管疾患を引き起こすリスクが高くなります。心血管疾患とは、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・抹消動脈疾患(下肢切断の原因となる)のことをいいます。

 動脈硬化を進行させる原因は糖尿病だけでなく、他にも高血圧・肥満・喫煙・脂質異常症があります。これらがあると、血管の壁に「粥腫」(=動脈硬化)ができ、血管の内腔が狭くなります。いわゆる「血管が細くなる」状態です。そこに血の塊りができると血が流れなくなり詰まってしまうのです。こうして、心血管疾患が引き起こされます。

 

 では、動脈硬化を進行させる原因のひとつである「脂質異常症」について、見てみましょう。

 脂質異常症とは、血液中の中性脂肪やコレステロールなどの脂質が基準よりも多い状態のこと

 いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールの基準値は70から139mg/dLです。つまり、一般的にはLDLコレステロール値が140㎎/dL以上のとき、脂質異常症と診断されます。でも、LDLコレステロール値が少しぐらい基準値より高くても、何も自覚症状はないので大丈夫だと思っていませんか?

 例えば、心臓発作を起こしたことのある人は、すでに動脈硬化が進行した状態であるため、次の発作を起こさないためにLDLコレステロール値を基準値よりも更に低くしておくことが重要とされています。実は、それと同じことが2型糖尿病の人にも言えるのです。なんと2型糖尿病の人が心臓発作を起こすリスクは、最近心臓発作を起こした人と同じくらい高くなっています。ですから、2型糖尿病の人のLDLコレステロール値の目標値は、もしかしたら想像以上に低い値かもしれませんが、以下のようになります。

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② 中性脂肪やコレステロールは体の中でも作られている

 中性脂肪やコレステロールが高いと、油ものやコレステロールの高い食べ物を控えようとする方が多いです。でも、ちょっと待ってください。
 油ものだけでなく、炭水化物も含めて食べ過ぎて取り込み過ぎた栄養素は、すべて中性脂肪という脂肪に変わり、体の中に蓄えられるのです。

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 一方で、コレステロールは体の中で食事と関係なく作られることの方が多く、食事由来は2割程度だとされています。

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 このことから、中性脂肪を下げるためには油だけでなく、甘いものや果物、アルコールの摂りすぎにも注意してください。そして、貯めこんだ中性脂肪をエネルギーに変えて消費するためには、運動が有効です。

 一方で、コレステロールは食事にいくら気をつけていても下がりにくいことがあります。そんなときには、お薬を使って適正な値にまで下げることが大切です。

 

 最初にもありましたが、糖尿病の合併症である大血管障害を防ぐには、血糖値だけでなく、高血圧、脂質異常症、体重管理、禁煙が重要です。

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 当院では、1年に1回は皆さんの足を観察させていただいています。これは下肢切断の原因となる抹消動脈疾患や足の傷を早期に発見するためです。また、動脈硬化の程度を調べる検査であるPWV検査、ABI検査も行っています。

 これからも、みなさんと一緒に合併症予防に取り組んでいきたいと思います。